帰国生受験の動向

●大都市圏の有力私立大学が合格者数を減らす

~都市部への学生の集中を防ぐため、2016年より文部科学省が入学定員の厳格化
~早稲田大・慶應義塾大・上智大・学習院大・明治大・青山学院大・立教大・中央大・法政大・東洋大・駒沢大・専修大・関西大・関西学院大・同志社大・立命館大で計4万人減(2015年→2018年)
~追加合格で調整、3月末まで追加合格を出す大学も
*東京都(特に山手線内)の私立大学合格者数は以前より10%は減っているので、帰国生入試にも影響があるかもしれません。


●英語民間試験の活用拡大

~2020年新テスト(センター試験に代わる大学入学共通テスト)導入に向けて
~東大をはじめとする国立大学では必須としない動向も

【主な英語民間試験】この他にGTEC、IELTS、TEAP、ケンブリッジ英語検定など

英語民間試験 英検 TOEFL iBT TOEIC L&R TOEIC S&W
主な使用目的 生涯学習 海外留学など 日常生活・ビジネス
実施回数(年) 3回 44回 10回 24回
受験者数 約339万人 非公表 約118万人 約1.2万人
会場数 400~500 最大86 最大251 最大43
受験料 2級5800円 約2万6000円 5725円 1万260円


【各英語民間試験のレベル】文部科学省の資料に基づく

英検 TOEFL iBT TOEIC L&R(聞く・読む)×2.5+TOEIC S&W(話す・書く)
1級 95~120 1845~1990
準1級 72~94 1560~1840
2級 42~71 1150~1555

*帰国生入試でも受験科目が増えたり、TOEIC可が減少、L&Rの他にS&Wも必要になったり、TOEFLに移行するなど、難化しています。
*例えば、横浜市立大学では受験資格としてTOEIC600点以上必要で、730点以上なら10点加点されます。大体700点あれば選択の幅が広がります。
*TOEFLは55~75点以上必要な所が多いですが、早稲田大学は70点以上、ICU(国際基督教大学)は75点以上欲しいところです。大体70点以上あれば選択の幅が広がり、80点以上あれば米国も視野に入ってきます。


●大卒の就職率は2018年で過去最高97.6%、求人1.78倍

~アベノミクスによる「超売り手市場」が続く→新卒は「人買い」(3年間は赤字)、中途採用は「技買い」
*英語圏・非英語圏に限らず、海外留学経験は非常に高く評価されています。これに英語力などが加わればさらに高評価です。


●帰国生受験のポイント

①やりたいこと、目標を明確にし、深堀りする。
 書類に書くメインの内容でもあり、面接でも相当突っ込まれます。「留学で得たものは何か」「将来の目標は何か」「今までやってきたことが今後にどう生きると考えているか」が問われます。


②ガイドブック・HP・先輩から大学について調べ、不明点は必ず入試センターに問い合わせる。
 留学生枠入試・帰国子女枠入試・AO入試の3つをメインに調べます。特に資格(単身留学可、語学能力試験・統一試験の有無など)の確認をしなければなりません。早稲田大学のように帰国生入試に在日外国人学校も加えている場合や日本の学生も受けるAO入試は、受験人数が増えます。また、大学のレベルも環境の1つであり、あまりレベルが低いと学生の意識も低く、流されやすくなります。
*『海外・帰国生のためのスクールガイドBiblos』(東京学参)
*『螢雪時代9月臨時増刊 全国大学推薦AO入試年鑑』(旺文社)


【センター試験について】
 日本の大学一般入試における共通試験で、申込は10月の2週間のみ、1月13日以降の最初の土曜日・日曜日の2日間にわたって行われ、全問マークシードです。国公立大学受験の場合は共通1次試験で、各大学ごとの記述式2次試験と合算で合否を出します。私立大学一般入試でもセンター方式が多数導入されており、2020年からは大学入学共通テストに移行します。留学生の場合は記念受験してもいいと思いますが、浪人した場合は準備して受験した方がいいでしょう。


③大学を見学しに行く。
 帰国生入試でもAO入試でも「オープンキャンパスには参加しましたか?」とよく聞かれます。オープンキャンパスに参加できなくても、なるべくその大学に出かけて行って学校見学をし、学食でご飯を食べて雰囲気を味わいましょう。大学によって強みが違うことにも注意しましょう。
 例えば、日本では観光業は裾野が広く、「21世紀型産業」として注目されており、2020年までに訪日外国人(インバウンド)4000万人、2030年までに6000万人を目指していますが、日本で最初に観光学を専門に組織したのは東洋大学国際地域学部国際観光学科であり、国策としての観光業推進を受けて最初に作られたのが立教大学社会学部観光学科です。


④必要に応じてTOEIC、TOEFL、TOPIKのスコアを準備する。
サマースクールなどに参加して1~2ヶ月英語づけになった生徒は、英語を学ぼうという意欲が強くなるので、参加できる人はなるべく早く参加するのがいいと思います。また留学生の場合、日本での英語学習との違いが生じます。ただ、単語と文法は知識がものを言いますし、読解・和訳の場合はむしろ日本語の問題が出てきます。TOEICもTOEFLも試験なので、高得点を取るためには対策が必要です。短期間で一気にTOEFL iBT80点に至った生徒は、先生から学んだやり方をことごとく実行に移していました。逆にどうしてもTOEICやTOEFLのスコアが伸びなければ、受験資格にこれらが入らない大学を選んでいけばいいということになります。
また、英語以外の外国語資格を認める大学や英語以外の外国語受験ができる大学などもあります。


⑤予備校や通信講座などを活用する。
予備校のメリットは小論文・面接指導、情報提供(過去問、受験情報など)、人脈拡大で、1ヶ月でも通った方が良いとされます。帰国生受験希望者は全体的にすごく増えており、英語の実力によってクラス分けがされていて、結局、合格をたくさん出しているのはTOEFL iBTのスコアが上位の生徒達です。
*代々木ゼミナール帰国大学受験生コース 東京本部校(山手線代々木駅前)、大阪南校(難波駅前)
在校生になればメールでのやり取りや添削、面接指導、受験情報の提供などでサポートを得ることができます。


⑥Web入力などの出願手続きを進め、必要書類を集める。
必要書類をそろえるのに時間がかかるので、早め早めの準備・手配が必要です。成績証明書・卒業(見込)証明書などは日本語・英語以外で記載されているものは日本語か英語に翻訳されたものが必要になります。大使館に行って公的翻訳をしてもらうこともできます。


⑦必要に応じて校長先生・担任の先生に推薦状を書いてもらい、翻訳してサインをもらう。
卒業した高校の学校長または教員による推薦書(日本文もしくは英文)が必要です。留学生の強みは何と言っても諸活動の多彩さです。複数のクラブ活動、寄宿舎での活動、ボランティア活動など、日本の中学生・高校生とは段違いの経験をしてきているので、これを前面に打ち出す必要があります。奨学金をいただいている人はそれもアピール材料になります。頑張っている生徒には担任の先生も応援したくなるもので、こういった諸活動やクラスでの様子をいろいろと盛り込んで、立派な推薦状を書いて下さいます。


⑧小論文・面接練習をする。
 「現地国と日本の教育の違い」についてはよく聞かれるので、常に比較する視点を持ちましょう。例えば韓国であれば、日本のセンター試験に当たるスヌンでは、高校3年生が大統領に次ぐぐらいに尊重され、受験票を忘れればパトカーが出動し、校門の前では母親達が敬拝したり、万歳したりしているなど、国民的行事となっていることは日本人採点者・面接官がびっくりする事実です。スヌンの受験票が割引に使えたり、スヌン後の自殺防止のために漢江にかかる橋に緊急連絡先が書かれていたり、公衆電話が設置されていることなども、日本では誰も知りません。


【PREP(プレップ)法】
プレゼン資料や上司への報告書などの「ビジネス文書」を作成する際に用いられる「文章構成のひな形(定型書式)」の事ですが、小論文にも使えます。HPなどでの体験談の構成にも使われています。
①Point:文章の要点部分です。最初にまず結論を述べます。
②Reason:Pointで述べた結論の理由を説明する部分です。
③Example:Reasonで述べた理由を裏付ける、具体的な例を説明する部分です。
④Point:文章のまとめ部分で、最後にもう一度結論を述べます。

【トークの達人】
 「トークの達人」と呼ばれる人達は「セルフ・トーク」「ケース・トーク」「コンセプト・トーク」「データ・トーク」の4つを駆使しています。「セルフ・トーク」と「ケース・トーク」を合わせて「エピソード・トーク」とも言います。


⑨新聞を読んで議論する。
 作問者は当然のことながら新聞を情報源の1つとしており、夏までの社会の動向には面接・小論文などに反映する可能性があります。新聞を読んで関心領域・関連領域について議論したり、スクラップ&コメントをするなどの工夫が必要です。こうした様子を担任の先生が見ていて、推薦状に書いてくれたケースもあります。例えば、日本で起こっていることに関しては、家庭で代わりにスクラップしてあげるのも一手です。関連領域のスクラップ&コメントをすると、1週間で別人(ビフォー・アフター)になり、1ヶ月続けた人には追いつけなくなります。小論文で書く材料は経験・知識・考えの3つのみですが、留学生の場合、経験を「コトバ」化すること、知識と考えを効率よく吸収することで短期間にレベルアップすることができます。そして、この知識・考えの吸収に最も役立つのが新聞というツールなのです。
また、面接で「最近関心のある社会の出来事は何ですか」ということはよく聞かれますが、留学先の情報はインサイダーしか分からないものなので、面接官もメリットを感じて食いついてくる場合があります。


⑩スケジューリングをする。
「出願期間」「受験日」「合格発表」「納入期限」の4つを明確にしてスケジューリングをします。
日本の私立大学の帰国生入試は7月に出願→第一次選考(書類選考)→9月に初旬に一次合格発表→9月上旬~中旬に第二次選考→9月中旬~下旬に二次合格発表というパターンが多いです。国公立大学の帰国生入試は11~12月に出願→第一次選考→2~3月に第二次選考というパターンが多いです。


⑪最善を尽くす+チーム作り
 大きく分けて、①実力以上の実績が出る場合、②実力通りの実績を出す場合、③実力以下の実績になる場合、の3つがありますが、①実力以上の実績が出る場合、共通しているのが「周りが一目置く(リスペクトする)ほどの頑張り」と「チーム○○が出来ていること」です。これは競争率が50倍、100倍、200倍に達する就活において顕著に現れます。
 試験である以上、実力は必要ですが、最後に勝負を決するのは「運」であり、「運」は「縁」から来ます。「縁」は人間関係ですが、特に「上からの引き立て」が重要です。「この子を応援してあげなければ」と思わせること、すなわち、「親や先生から尊敬・尊重される自分であるか」ということが重要なのです。


【進学・就職・結婚の三大転機】
 人生は選択の連続ですが、特に進学・就職・結婚はその後の人生に与える影響が格段に大きいと言えます。逆に言えば、子供だけでは手に負えない領域でもあるので、親子関係があまり良くない場合でも、この3つの時期には親に歩み寄ってくる可能性が高いと言えます。したがって、親からすれば子に尽くす貴重なチャンスともなるので、できる精一杯のことをしてあげるとよいでしょう。具体的には結果に一喜一憂せず、「褒めること」「認めること」に徹してあげると、子供には非常にプラスに作用します。