文型論再考

(pattern grammar)


第1章 「文型」とは何か
第2章 「5文型理論」のルーツ
(1)オニオンズの「5文型理論」
(2)細江逸記による「5文型理論」の導入
(3)現在の学校英文法における「5文型理論」
第3章 「文型理論」の歴史
(1)「5文型理論」の問題点
(2)クァークの「7文型理論」
(3)安藤貞雄の「8文型理論」
(4)吉田正治の「9文型理論」
(5)ホーンビーの「25動詞型理論」
(6)従来の「文型理論」のメリット・デメリット
第4章 「修正5文型理論」について(試論)
(1)「補語」の概念の拡張・変換について
(2)「動詞」の分類について
(3)「述語動詞」の概念拡張について
(4)受動態の位置付けについて
(5)「修正5文型理論」
第5章 「構造―機能分析」について(試論)
(1)語法における分類
(2)意味内容における分類
(3)統語的機能による分類(動詞句の次に要請する語句の種類)
(4)統語的機能による分類(目的語の次に要請する語句の種類)
(5)単文における述部類型


第1章 「文型」とは何か

 動詞の基本概念のうち、「法」「時制」「相」はクーパー(Cooper)の『英語文法』(1685年)で整理され、さらにマレー(Lindley Murray)の『英文法』(1795年)ですっきりとしたものとなっていますが、「文型」(sentence pattern)の概念が出てきたのは実は意外に遅いのです。現在、日本では「5文型」という考え方が広く使われており、どんな学習参考書にも必ず重点的に説明してありますが(中学校英語の学習指導要領でも「5文型」及びその他の文型として「there構文」「it~to構文」「tell/wantなど+目的語+to不定詞」を指導することとなっています)、元々明治時代の学校英文法では「4文型」が教えられていました。現在のような「5文型理論」は1904年にC・T・オニオンズ(Onions)の提唱した5つの「動詞型」(verb pattern)が改変されたものとされています。

 しかしながら、この「5文型」という考え方は日本以外の国ではあまり一般的ではなく、英語ネイティブも「文型」を特に意識せずに、「動詞」によって「文」を組み立てています(日本人でも日本語の「文型」を意識しながら日本語を使っている人はまずいないでしょう)。アメリカ人のインテリでも「文型理論」を知らない人は多く、「これは何文型なの?」「文型って何?」「これって補語じゃないの?」「補語って何?」といった「会話の断絶」もよく聞かれます。

 実際には「5文型」ではうまく説明できない文も存在しており、「5文型」を強調しすぎるとかえって学習の妨げになるという主張が多く見られるのも事実です。はてさて、わずか100年前に突然現れた「理論」で、日本では最重要概念の如く位置付けられながら(「英文法の要は文型だ」「全ての英文はこの5つの文型のどれかに分類される」などとどれだけ強調されてきたことでしょうか)、ほとんど日本でしか使われておらず、英語ネイティブすらほとんど知らないような「文型」とは一体何なのでしょうか?


第2章 「5文型理論」のルーツ

(1)オニオンズの「5文型理論」
 オニオンズはOxford English Dictionaryの編纂にも携わった人です。後にも出て来ますが、「25動詞型理論」を提唱したホーンビーもThe Advanced Learner’s Dictionary of the English Languageを中心的に編纂しており、「7文型理論」を確立したクァークは「英語慣用調査」(Survey of English Usage)と呼ばれるプロジェクトで得られた資料を基にしていますので、膨大な事例・文例研究から「文型理論」「動詞型理論」(ちなみに「文型」は「文の要素の機能function」に注目した概念であり、「動詞型」は「文の構造structure」に注目した概念です)が生まれてきたと言えるでしょう(日本語研究で画期的な成果を出した大野晋なども、古語辞典の編纂を研究のベースとしています)。

 オニオンズはAdvanced English Syntax(1904)で「述部」(predicate)を5つの形式に判別しています。
①第1形式 主語+完全自動詞
 The shades of night were failing.
②第2形式 主語+不完全自動詞+補語
 He will become a good doctor.
③第3形式 主語+完全他動詞+目的語
 The man killed a bear.
④第4形式 主語+完全他動詞+間接目的語+直接目的語
 John gave Mary a book.
⑤第5形式 主語+不完全他動詞+目的語+補語
 We elected Ike President.


(2)細江逸記による「5文型理論」の導入
 このオニオンズのAdvanced English Syntaxとスウィート(Henry Sweet)のNew English Grammarの影響を多大に受けたのが、細江逸記の『英文法汎論』(1917)です。ここでも、「文型」分類は「文全体の構造」というよりも、むしろ「述部の構造」を分類するものとして提案されており、動詞を自動詞2種類(完全陳述動詞、不完全陳述動詞)、及び他動詞3種類(単純他動詞、付与動詞、作為動詞)の計5種類に分類した上で、「動詞の性能ないし用法にこの5種の区別のあることは、すなわち文の陳述形式に5個の異なった形式を生ずるゆえんであり、したがって文成立の基本形式に5種の差別を生ずるゆえんである」(『英文法汎論 改訂新版』1999)と述べています。つまり、「動詞が5種類であるから、結果として文型も5種類である」という考え方です。


(3)現在の学校英文法における「5文型理論」
現在の学校英文法では、「5文型」においては、節(単文)を構成する要素として「主語」(Subject)、「述語動詞」(Verb)、「目的語」(Object)、「補語」(Complement)の4つを設定し(これら以外の要素は「修飾語Modifier」と位置付けられます)、これらの結合の仕方によって、英文の備え得る基本的構造を5種類に分類しています。

①第1文型 S+V
これは修飾語Mを除いた時、主語Sと述語動詞Vだけで文章が完結している文型で、この時、そのVを「完全自動詞」と言います。第1文型に用いられる動詞にはbe, come, goなどがあります。

②第2文型 S +V +C
 これは修飾語Mを除いた時、主語Sと述語動詞Vと主語を説明する補語Cで文章が成り立っている文型で、この時、そのVを「不完全自動詞」と言います。この時、「主語S=補語C」という関係が成立しているので、この補語を特に「主格補語」(Subjective Complement、アメリカの文法教科書では「主語補語」〔Subject Complement〕と呼ぶのが一般的です。「格」の概念が明瞭ではない英語に「主格補語」という呼称は妥当ではないという意見も聞かれます)と言います。アメリカの小学生には「主語とつなぎ動詞によって始められた意味をcompleteにするから、Subject Complementと呼ぶ」と単純明快に説明されますが、小学生の理解としてはそれでいいものの、実際にはそれだけではありません。

第2文型に用いられる動詞には次のものがあります。
状態の維持を表すbe, remainなど。
状態の変化を表すbecome, get, come, goなど。
感覚を表すseem, feel, look, hear, smell, tasteなど。

③第3文型S +V + O
これは修飾語Mを除いた時、主語Sと述語動詞Vと動作の対象となる目的語Oで文章が成り立っている文型で、この時、そのVを「完全他動詞」と言います。

④第4文型S +V +IO +DO
 これは修飾語Mを除いた時、主語Sと述語動詞Vと動作を受ける間接目的語IOとその動作を受けて動く直接目的語DOで文章が成り立っている文型で、この時、そのVを「授与動詞」と言います。間接目的語IOと直接目的語DOの位置を入れ替えると、前置詞が加わってS+V +DO +前置詞+IOという形になり、この時の前置詞はtoかforの場合がほとんどです(toの場合の方が多い)。

 第4文型に用いられる動詞には次のものがあります。
toが加わるgiveなど。
forが加わるdo, cookなど。

「文型」を中心にアメリカにおける文法教育と日本における英文法教育を比較すると、最も違いが生じるのがこの第4文型の捉え方です。アメリカでは「ダイアグラム」と呼ばれる図式化が盛んに取り入れられていますが、そこでは「間接目的語」という概念は無く、「目的語」は全て「直接目的語」(Direct Object)を意味し、objectという語が単独で見られることもほぼありません。実はアメリカでは第4文型に相当する文型は認められておらず、「間接目的語」は副詞と同じ扱いを受けているのです。第4文型の考えに慣れている日本では、「直接目的語」と「間接目的語」は対等であるとの印象を持ちやすいものですが、例えば、Mr. Spinoza gave us the test.という文の場合、Mr. Spinoza gave the test.とは言えますが、Mr. Spinoza gave us.では不完全であり、また、The test was given.は可能ですが、We were given.では文が完成したことにならないように、必ずしも同等とは言い難いのです。しかし、両方共受動態で主語になり得る場合もあり、第4文型での表現と第3文型での表現のニュアンスの違いも広く論じられていますので(例えば、He taught English to them.では単に「英語を教えた」だけですが、He taught them English.だと「彼らは英語を身に付けた」ことまで含意します)、これは日本式の分類の方にメリットがあるのではないかと見られています。

実はこのアメリカ式発想と日本式発想の違いは「5文型理論」の元祖たるオニオンズも迷ったところであり、彼は” Fourth Form of the Predicate”の例として挙げた”I gave him the money.”のhimをindirect objectとしながらも、そのわずか数ページ後には”Give him a glass of wine.”のhimをadverv-equivalent(副詞相当語句)と見なしているのです。

⑤第5文型S +V +O +C
 これは修飾語Mを除いた時、主語Sと述語動詞Vと動作の対象となる目的語Oと目的語を説明する補語Cで文章が成り立っている文型で、この時、そのVを「不完全他動詞」と言います。「目的語O=補語C」という関係が成立しているので、この補語を特に「目的格補語」(Objective Complement、アメリカの文法教科書では「目的語補語」〔Object Complementと呼ぶのが一般的です〕)と言います。第5文型におけるこの関係をイェスペルセンが考えた用語で、「ネクサス」(nexus)と呼びますが、「ネクサス」とは「SV構造」のことを意味し、節の「簡易形式」という視点で捉えられます。また、第5文型は基本文型とされていますが、元の文における目的語Oを主語Sとし、補語Cを動詞Vとするような文を含む実質上の複文の構造であるとも考えられることから、基本文型としては扱わないほうが実際的だという考えもあることも知っておくといいでしょう。

 第5文型に用いられる動詞には次のものがあります。
知覚動詞のfeel, see, hearなど。
使役動詞のmake, have, letなど。

ところで、通常、進行形や完了形の文は第2文型とは見なさず、動詞部分を原形や三単現の形にして文型を考えており、受動態の文も第2文型とは見なさず、能動態にした時の文型を元に、それぞれ第3文型の受動態、第4文型の受動態、第5文型の受動態と考える場合が多いと言えます。群動詞(動詞句)を含む文は群動詞全体を1つの動詞と考えることが多いでしょう。


第3章 「文型理論」の歴史

(1)「5文型理論」の問題点
 初学者の英文法学習において、「5文型理論」は英語の体系的理解を助けてくれますが、学習が進んでいくと、余りにも例外が多いことや、整合性のある説明ができないケースがあることに気づき始め、「拡張」や「修正」を盛んに行うのですが、単にパターンが増えるのみで、汎用性のある普遍的文法概念としてはなかなかしっくりこないという現実があります。実際、5文型に限らず、「文型」論は文構造についての規則としては一般性が比較的高いものの、学習者が個別の文を理解したり、実際に文章を書いたり、英会話によるコミュニケーションを実践する場合、むしろ個々の動詞の「語法」や、いわゆる「構文」といった個別性の高い規則の方がはるかに実用性が高いということもよく知られた事実です。例えば、学習者が英文を理解する上で「5文型」の知識が有効であるかを実証的に検証した研究でも、日本人EFL学習者を対象とした調査において、「ある英文の意味を理解する能力」と「その文型を認識する能力」とは互いに独立したものであり、また、特に習熟度の低い学習者ほどその傾向が強いことを示されています。

 あるいは個々の文型理解においても、「目的語」と「補語」の区別が論理的に考えると難しく(どちらも「動詞が要請する語」であり、「文の必須要素」となっている)、この区別に固執しすぎると、「文法のための文法」という本来の英語学習の目的を忘れた、一種の「クイズ解き」になる危険性も出て来ます。

 さらに「補語」になり得る品詞は通常「名詞」「代名詞」「形容詞」とされますが、She acted strangely.やMother is out.のような文を見ると、これらは「5文型理論」では第1文型SVと分類されますが、actは自動詞であるものの、やはり「どのようにふるまったのか」といった語が必要であると思われ、あるいはoutは副詞であるから補語ではないと見なされるものの、「Mother=outの状態にある」と考えられるので、「主格補語」と同じに見ることができてしまうわけです。そこでbe動詞と結合した場合は「形容詞」とも見られるという解釈も成り立ちますが、むしろ、従来、「修飾語」と位置付けられてきた「副詞」の中には文意上不可欠なものがあると考えられるようになってきました。こうなると、She put the book on the desk.なども第3文型SVOではなく、on the deskは文の必須要素と見るべきだとなるわけです(「the book=on the desk」、あるいは「the book is on the desk.」の状態にputしたと考えれば、第5文型SVOCにも見えてきますね)。


(2)クァークの「7文型理論」
 ランドルフ・クァーク(Quirk et al)はA Comprehensive Grammar of the English Language(1985)で「付加語」(Adverbial)を加えた「7文型理論」を提唱しています。同書は「英語慣用調査」と呼ばれるプロジェクトで得られた資料の分析を基に、インフォーマント・テストや英語ネイティブの言語的直観を援用してまとめられた大著であり、現代英語文法に関しては文句なしに最も権威があるとされています(後にこれを縮約した学習用文法書として、A Student’s Grammar of the English Language(1990)が出版されています)。「7文型理論」では従来の「5文型」にSVAとSVOAという文型が加わっており、これまで「任意的要素」として考えられていた「副詞的要素」を「義務的要素」とする動詞があると考えられています。この「7文型理論」は従来の「5文型理論」の致命的欠陥を補うものとして理論的に大変重要視されており、今では多くの英語辞書が採用する所となっています。

①S+V(intransitive、完全自動詞)
 Prices rose.
②S+V(monotransitive、目的語を1つ取る他動詞)+Od(直接目的語)
 Elizabeth enjoys classical music..
③S+V(copular、連結詞的動詞)+Cs(主格補語)
 Your face seems familiar..
④S+V(copular)+As(主語に関する副詞類)
 My sister lives next door..
⑤S+V(ditransitive、二重目的語を取る動詞)+Oi(間接目的語)+Od
 We all wish you a happy birthday..
⑥S+V(complex transitive、不完全他動詞)+Od+Co(目的格補語)
 The president declared the meeting open..
⑦S+V(complex transitive)+Od+Ao(目的語に関する副詞類)
 The doorman showed the guests into the drawing room.

 クァークの「文型理論」の特徴は、単に「副詞的要素」を加味したという以上に、CやOに新しい規定を加えたことにあるとされます。すなわち、「補語」を「名詞」「形容詞」に限定し、さらに「非定型節」(non-finite clause)の概念を認めることによって、「準動詞」(Verbal、不定詞・分詞・動名詞を指す)を含む文を「複文」(Complex Sentence)に分類し、「5文型理論」の第2文型SVCや第5文型SVOCの整理を行なっているのです。例えば、SVOCのCの部分に準動詞が来ている場合、OCを「埋め込み文」としてOの要素と分類し、これによってSVOC型に分類されていた文の多くがSVO型に移行し、SVOC型のCは必然的に「名詞」「形容詞」のみになるわけです。こうすると、SVOC型はかなり単純になり、逆にSVO型がかなり複雑になると考えられますが、ここで「埋め込み文」を含まない「単文」(Simplex Sentence)とそれを含む「複文」とを明確に区別し、後者の文型を前者の文型に沿って論じればいいことになります。

 「5文型理論」とクァークの「7文型理論」は表面上似ていますが、実は分類の仕方がかなり異なっています。これは「5文型理論」の構造分析が「文の表層構造」に基づいているのに対し、「7文型理論」は「文の深層構造」に着目しているためと見ることもできるでしょう。


(3)安藤貞雄の「8文型理論」
安藤貞雄は『英語教師の文法研究』(1983)で「8文型理論」を提唱していますが、ここでは「5文型」「7文型」ではSVCと分析される文型をSVCとSVCAの2つの文型に分類しています。これはI am afraid of dogs.やJohn is aware of the difficulty.といった文章において、afraid, awareなどの形容詞は常に主語と前置詞の目的語の両方を要求する「2項形容詞」であることから、be afraidなどを動詞+補語、of+名詞句を義務的な要素であると分析したわけです。

①S+V
 Birds fly.
②S+V+A
 He lives in London.
③S+V+C
 He became rich.
④S+V+C+A
 I am aware of the danger. I am aware that he is a spy.
⑤S+V+O
 I have lost my key.
⑥S+V+O+A
 He put the key in his pocket.
⑦S+V+O+O
 John gave me a hat.
⑧S+V+O+C
 I forced John to go.


(4)吉田正治の「9文型理論」
 吉田正治は『英語教師のための英文法』(1995)で「9文型理論」を提唱しています。

①S+V
 Prices rose very sharply last month.
②S+V+As
 The next meeting will be on March 5.
③S+V+Cs
 Tom suddenly fell ill in Paris.
④S+V+Cs+As
 I have been in the garden all the time since lunch.
⑤S+V+Od
 I caught a big fish in the river.
⑥S+V+Oi+Od
 Bill gave his sister a pin for her birthday.
⑦S+V+Od+Ao/s
 We kept him in bed. The scheme struck me as ridiculous.
⑧S+V+Od+Co
 They found him dead in a cave.
⑨S+V+Od+Co+Ao
 That noise made us aware of the danger.

 どこまで「分類の細分化」が進むのか、といった感が無きにしも非ずですが、他にもVがbe動詞の場合を特別に扱う考えなどがあることも知っておきましょう。表層構造による分類をさらに推し進めていくと、必然的に次の「動詞型理論」に行き着きます。


(5)ホーンビーの「25動詞型理論」
 ホーンビーは日本における初期の英語教育にも助言者として関わった人物で、日本ではよく知られていますが、A guide to Patterns and Usage in English(1954)で「25動詞型理論」を提唱し、さらに53~69の下位区分を提示しています(「動詞型」の概念は元々パーマー〔Palmer〕が唱導したと言われます)。これはThe Longman Dictionary of Contemporary English(1977)でも採用され、後の改訂版では統合・簡略化が進められている分類区分です。

動詞型1 動詞+単一直接目的語
 I know your name.
動詞型2 動詞+(not+)to不定詞など
 Please try to do better next.
動詞型3 動詞+(代)名詞+(not+)to不定詞など
I do not want anyone to know.
動詞型4 動詞+(代)名詞など+(not+)(to be+)叙述語
 Most people supposed him (to be) innocent.
動詞型5 動詞+(代)名詞+原形不定詞など
 Watch that boy jump!
動詞型6 動詞+(代)名詞+現在分詞
 I saw the thief running away.
動詞型7 動詞+(代)名詞+形容詞
 Can you push the door open?
動詞型8 動詞+(代)名詞+名詞など
 They made Newton President of the Royal Society.
動詞型9 動詞+(代)名詞+過去分詞
 He could not make his voice heard.
動詞型10 動詞+(代)名詞+副詞語句
 Please put the book on the table.
動詞型11 動詞+that節
 I suppose (that) you will be there.
動詞型12 動詞+(代)名詞+that節
 Did he warn you that he might be late?
動詞型13 動詞+接続語(疑問詞、whether)+to不定詞など
 I wonder how to get there.
動詞型14 動詞+(代)名詞+接続語+to不定詞
 I showed them how to do it.
動詞型15 動詞+接続語+節
 Nobody will believe how difficult this work has been.
動詞型16 動詞+(代)名詞+接続語+節
 Tell me what this is.
動詞型17 動詞+動名詞など
 Please stop talking.
動詞型18 動詞+直接目的語+前置詞+前置詞の目的語
 He read the letter to all his friends.
動詞型19 動詞+間接目的語+直接目的語
 Have they paid you the money?
動詞型20 動詞+(for+)距離・時間などの副詞的付加語
 We walked (for) five minutes.
動詞型21 動詞のみ
 We all breathe, eat and drink.
動詞型22 動詞+叙述語
 This is a book. It is easy to do that.
動詞型23 動詞+副詞的付加語
 There are three windows in this room.
動詞型24 動詞+前置詞+前置詞の目的語
 You can rely upon that man.
動詞型25 動詞+(目的などの)to不定詞
 He came to see that he was mistaken.

 これは「文の表層構造」の分析が中心になっており、しかも文法レベルでの記述というよりも、辞書における語法の説明の便宜を図ったものと言えるでしょう。


(6)従来の「文型理論」のメリット・デメリット
 まず、世界中でほとんど日本でだけ、「5文型理論」が100年以上も採用され続け、「英文法の中心」の如き位置を占め続けてきたのは、それなりの理由があります。1つには、このパターン分類が「恣意的」(したがって、いくらでも他の理論が構築できてしまいます)であるにせよ、ある程度の整合性を持った理論に基づいて頻度が高いものを抽出しており(といっても筆頭に来る第1文型はむしろ頻度はきわめて低く、細かく分類すれば、5文型の典型パターンよりももっと頻度が高いパターンが出て来ます)、英語学習者にとっての「実用性」があるということです。したがって、「初学者」はたいていこの「文型理論」を徹底的に学ぶことから始めて、英語の基本構造を理解するというプロセスと通ってきたのです。これはこれで学習効果がある方法であったと言えます。

 ところが、学習が進んでいくと必ずぶつかる疑問が、「例外が多すぎる」「整合性が貫徹されているとは言えない」といった点です。ここで「研究者」は「整合性」や「文型の根源的意味」を求めて再構成を図ろうとするのですが、なかなか成功しません。「学者」達が苦労して作り上げた「7文型理論」や「8文型理論」も「5文型理論」を補完することに目的があり、より整合性のある説明をするために「文型」を増やしていったと言えます。ここで従来の文型理論の限界をも指摘しておく必要があるでしょう。

①従来の「文型」理論は厳密に言えば、「単文における述部構造の分類」を基本としています。実際には様々な「構文」があり、「複文」へと複雑化していき、一般的「文法」よりも個別的「語法」の方が影響が大きかったりするので、従来の「文型」理論を基本原理として「文法」を構築するのには無理があるのです(そもそも英語ネイティブは「文型」を意識していません)。

②従来の「文型」理論は「理念型」としての「包括的分類概念」を提示したわけではありません。したがって、「全ての英文は基本的にこの5つの文型のどれかに入る」「5つの文型を理解すれば、どんなに難しい英文でも理解できる」というのは明らかに言いすぎです。そして、「理念型」としての「分類」と「現実型」としての「文例」「パターン」は区別されるべきでしょう。「分類」上はあり得ても、実際に「文例」を確認できないケースや「頻度」が非常に低い「文例」があるのは事実なので、「同列」に位置付け、理解する必要性は無いとも言えます。

③従来の「文型」理論は「自動詞」と「他動詞」を「動詞の分類」の最初に置き、そこから「第1文型SV」を立てることから始めたため、「補語」の概念を生み出さざるを得なくなったと考えられます。ところが、「SVC」と「SVA」は意味的にほとんど変わらないケースがあり、「第2文型SVC」の「主格(語)補語」と「第5文型SVOC」の「目的格(語)補語」は同じ「補語」として見ていいかという疑問さえ生じてきます。実際には「自動詞」と「他動詞」は「自動(詞)用法」「他動(詞)用法」と考えるべきであり、「動詞の分類」であれば、「be動詞」と「一般動詞」、「状態動詞」と「動作動詞」という分類の方が語法的にも意味的にも統語論的にも大きな違いがあると見ることができます。

④英文の基本構造は「名詞句+動詞句+名詞句」(一般的に言えば「S+V+X」の形)という「三段構造」です。これは「英語のリズム」と言ってよく、このパターンにおいてさらにバリエーションが生じてくるのも、「基本構造」なればこそと思われます。従来の「文型」理論では「第1文型SV」「第2文型SVC」「第3文型SVO」が同列にあるかのようですが、現実的には決してそうではありません。

⑤基本的に「文型理論」は「読解」のための「文法的知見」と言えます。実際に英会話やコミュニケーション、英作文のためには何十、何百という「文例」を覚える必要があり、また、その方が実際に役に立つでしょう。「代表的文例」を「文型」(文のパターン)と呼ぶなら、むしろこちらの方になります。現在の学校英文法に対する批判として、「中学・高校と6年間も英語を学んだのに、全く使えない」というものがありますが、英会話・コミュニケーションに重きを置いた学習になっていない点があるにせよ、大量読書や英語メディアを駆使できるほどの「読解力」や「情報力」が育っていないのも事実です(日本人の中学生・高校生がそうであるように、アメリカ人の中学生・高校生も普通にたくさん本を読み、新聞・テレビで様々な情報を吸収しているでしょう)。シビアに言えば、「文型」を強調して英語学習を進めれば進めるほど、「精読力」はつくかもしれませんが、英会話力・コミュニケーション力・英作文力はますます伸びなくなることすらあり得るのです。


第4章 「修正5文型理論」について(試論)

(1)「補語」の概念の拡張・変換について
 元々、「自動詞」と「他動詞」の区別から始まり、動作対象たる「目的語」を必要とする「他動詞」とそれ自体で動作が完結する「自動詞」が分けられましたが、いわゆる第2文型のように自動詞だけでは文の意味が成立しないものが存在するので、第1文型を形成する動詞を「完全自動詞」、第2文型を形成する動詞を「不完全自動詞」とし、不完全自動詞を補う語として「補語」の概念が導入されました。この「補語」になり得る品詞としては「名詞」「代名詞」「形容詞」とされます。

 ところが、先述のようにShe acted strangely.やMother is out.のような文を見ると、actは自動詞であるものの、やはり「どのようにふるまったのか」といった語が必要であると思われ、あるいはoutは副詞であるから補語ではないと見なされるものの、「Mother=outの状態にある」と考えられるので、「主格補語」と同じに見ることができてしまうのです。そこでbe動詞と結合した場合は「形容詞」とも見られるという解釈や、「副詞」を新たな要素として取り込み、文型を拡大するという展開も成り立ちますが、むしろ、「補語」の概念を拡大した方が説明しやすいと思われます。

 すなわち、動詞にはまず意味的に「状態動詞」と「動作動詞」があり、「状態動詞」は必ず「状態を表わす語」「状態の内容を示す語」を必要とするので、これを「状態語」(Condition)と名付ける方が実態に沿うと思われます(「補語」だと仕方なく補う語であって、必然的に要請される感じが薄いと言えます)。そして、「動作動詞」には動作がそれ自体で完結する「自動詞」と動作対象を必要とする「他動詞」があり、「他動詞」には「目的語」を1つ必要とするもの、「目的語」を2つ(直接・間接)必要とするもの、「目的語」及び目的語をめぐる状況を示す「状況語」(Condition)の2つ(「目的語」と「状況語」はSV関係にある)を必要とするものの3つがあると見るべきでしょう。つまり、「状態動詞」が要請するものが「状態語」であり、「動作動詞」のうち「他動詞」が要請するものが「目的語」であるというわけです。そして、「状態」を表わすものが「状態語」であると定義すれば、名詞、代名詞、副詞のいずれであってもよいことになり、これによって「主格補語」は「主格状態語」、「目的格補語」は「目的格状況語」として捉えられます(「補語」を名詞・代名詞・形容詞として位置付けると、第5文型が「目的語」+不定詞・分詞という形を取る時、「目的語」に続いてこれを規定する語句を「補語」と見ることができなくなってしまいます)。通常、第5文型を形成する代表的動詞として、「使役動詞」と「知覚動詞」が挙げられますが、この場合の「知覚動詞」は「状態動詞」ではなく、「動作動詞」たる「状況認識動詞」として捉え、「目的語」+「目的格状況語」という「SV目的語」を要請すると考えた方がいいでしょう(呼称に問題があるとされる「使役動詞」も、「状況創造動詞」と見ればいいかもしれません)。

 したがって、She acted strangely.やMother is out.などの文章も、「5文型理論」で第1文型と見るのではなく(これは意味的に無理があります)、「7文型理論」で言うSVAとして見るのでもなく(そもそも「付加語」と「補語」は多分に重なります)、第2文型SVCとして見るべきとなります。liveなども「どういう状態で生きているか、住んでいるか」という「副詞(句)」を伴うのが普通なので、これを「状態語」と見て、第2文型SVCと捉える方が分かりやすいですね。「修飾語」と「状態語」の違いは、無くても文意上支障が無いのが「修飾語」(より詳しい説明をする)で、無いと文意上完結しないのが「状態語」(そもそも「状態動詞」は「状態」を表わす語を必要とします)と見ることができます。こうすると、She put the book on the desk.はSVOAではなく、SVOCとなります(「the book=on the desk」、あるいは「the book is on the desk.」の状態にputしたと見ることができます)。


(2)「動詞」の分類について
 ここで改めて問われるのが、「自動詞」「他動詞」の定義です。これは本来、動詞の分類ではなく、「動詞の用法」の分類であり、自動詞は動詞の「自動詞用法」、他動詞は動詞の「他動詞用法」と分類するのが正しいとされます(さらに正確に言うと、「自動用法」「他動用法」と言った方がいいかもしれません)。例えば、openという1つの動詞の中に自動詞用法と他動使用法が含まれていますが、このように両方の用法を持っている動詞は「能格動詞」(ergative verb)と呼ばれており、数百語あると見られていますが、主要動詞は大体120~140個ぐらいなので、ほぼほとんど全ての動詞に当てはまると言ってもよいでしょう(極端なことを言えば、makeのように、5文型の全ての文例を作ることができる動詞も無いわけではありません)。

 この観点に立つと、動詞には意味的に「動作動詞」と「状態動詞」に区分され、「動作動詞」には「自動用法」と「他動用法」の2つがあって、厳密に言えば「自動用法のみのもの」「他動用法のみのもの」「自動用法も他動用法も両方共持つもの」の3種類があることになり、現実的にはほとんどが「自動用法も他動用法も両方共持つもの」となります。

 したがって、「状態動詞」はいわゆる「自動詞」ではないと結論づけられるわけですが、ここで言う「状態動詞」とは、通例「命令形にできない」「進行形にできない」といった特徴を持つ狭義の「状態動詞」ではなく、いわゆる第2文型を形成する「状態を表わす動詞」「状態の変化を表わす動詞」「外見を表わす動詞」「知覚動詞」の4つを指します。広義の「状態動詞」と言ってもいいでしょう。

①状態を表わす動詞(「~である」)
(1)beのグループ~be, lie, sit, standなど。
(2)keepのグループ~continue, hold, keep, remain, stayなど。
②状態の変化を表わす動詞(「~になる」)
 become, come, get, grow, make, turn, fall, go, runなど。
③外見を表わす動詞(「~に見える」)
 appear, look, seemなど。
④知覚動詞(「~と感じる」)
 feel, smell, sound, tasteなど。


(3)「述語動詞」の概念拡張について
 Vは「述語動詞」を指すとされます。

He looked at her.
He looked up to her.
He looked down on her.

 以上は「5文型理論」では第1文型として分類されます。しかし、in the kitchenなどと違い、この場合の「前置詞」は後に来る「名詞(句)」を目的語として規定するというよりも、明らかに前の動詞と連結して、動詞の意味を規定していると思われます。したがって、「動詞」がVなのではなく、「述語」「動詞(相当)句」がVであると見るべきで、この場合、look自体は「自動詞」であっても、明らかに前置詞や副詞と「他動詞句」を形成していると見る方が妥当なので、いずれも第3文型SVOと考えるべきでしょう。take it offなどもtake offが「他動詞句」として機能し、itが目的語になっていると思われ、stand upやget upといった「自動詞+副詞」句も「自動詞句」として見るべきとなります。

 さらに「修飾語」として「形容詞句」「副詞句」を形成する「前置詞」と、「動詞」に連結して「動詞句」を形成する「前置詞」(これはむしろ「後置詞」と呼ぶべきです)を区別する必要があり、両者を一括した概念として「連結詞」「付置詞」「付加詞」を創出し、その中に「名詞」を目的語として持ち、「修飾語」を形成する「前置詞」と「動詞」に連結する「後置詞」があると見た方が分かりやすいと言えるでしょう。

 この「動詞句」の観点に立つと、provide A with Bやtell A to B(=tell B A)なども「直接目的語」「間接目的語」(「直接目的語」を「対象語」、「間接目的語」を「目的語」と言ってもいいかもしれません)の2つを必要とする「他動詞句」として捉えることができます(あるいは、通常「副詞句」と見なされる「前置詞句」を「名詞句」と見なす考え方も英語学的には成り立ちます)。すなわち第4文型、SVOOの形成です。


(4)受動態の位置付けについて
 「動作動詞」のうち、「他動詞」は「受動態」にすることができます(もちろん、「他動性」が弱い動詞の場合、「受動態」が成立しないことがあります)。これは「他動詞」は「主語」と「目的語」をつなぐ役目があるからで、「主語」中心に動作表現をすれば「能動態」となり、「目的語」中心に動作表現をすれば「受動態」となるわけです。ここで注意しなければならないのは、元々「動作動詞」であっても、「受動態」になった途端、「状態動詞」に変化することです。これは「ある動作を受けている、されている」ということ自体が1つの「状態」を示しているためと思われます。したがって、be covered with~、be filled with~などは「状態動詞+状態語」あるいは「be動詞+状態語」であると思われ、第2文型SVCとなります。同様にbe interested in~、be surprised at~、be disappointed in~なども「感情形容詞」ではありますが、「後置詞」以下の語句を必要としており、「状態動詞+状態語」「be動詞+状態語」として第2文型SVCと理解すべきでしょう。


(5)「修正5文型理論」
以上の「補語の概念の拡大・転換、状態語の概念の創出」「動詞から動詞句への概念の拡張」「前置詞から後置詞も含めた連結詞・付置詞・付加詞の概念創出」「受動態の状態語による位置付け」等の視点より、「7文型理論」を新たに立てるよりも、従来の「5文型理論」をより整合的に解釈した「修正5文型理論」に再構成する方が、はるかに妥当性があると思われます。

①S+V(状態動詞)+C(状態語)
②S+V(動作動詞・自動用法)
③S+V(動作動詞・他動用法)+O(目的語)
④S+V(動作動詞・他動用法)+O+O(二重目的語)
⑤S+V(動作動詞・他動用法)+O+C(目的語+状況語=SV目的語)

 「動作動詞」は基本的に「目的語」を要請しますが、いわゆる「空間的イメージ」(英語は「空間的イメージを強く持つ言語」とされます。例えば、前置詞でもatは「点」のイメージ、onは「線」または「平面」のイメージ、inは「平面」または「立体」のイメージを持ちます)で言えば、「無」の「目的語」要請が②の動詞(すなわち「自動用法」)、「点(0次元)」の「目的語」要請が③の動詞、「線(1次元)」(「~に」「~を」や「~から」「~を」といった動作は線的移動のイメージがあります)の「目的語」要請が④の動詞、「平面(2次元)」「空間(3次元)」(目的語を主語とする状況、すなわちSV目的語。call A Bやname A BのようにA=Bの時は「SV平面」で、see him enter into the roomのような場合は「SV空間」と言えばいいかもしれません)の「目的語」要請が⑤の動詞であると整理できます。こうした観点に立つと、動詞の「意味」と「機能」から文の「構造」を規定・分類することが可能になります。

 例えば、tell A to doも命令を表わす「間接話法」の表現と取れば、「直接話法」に置き換えられるので、「~に」「~を」という線的イメージがあると思われます(SVOO)。「Aがdoする」という「状況創造」に比重が置かれれば、空間的イメージを持っていることになります(SVOC)。prevent A from doingなども2つの名詞句(人と動名詞)が要請されますが、これは線的イメージというよりも、「Aがdoできなくする」「Aがdoするのを妨げる」という「状況創造動詞」として、空間的イメージで捉える方が現実に合うでしょう(SVOC)。逆にinform A of B(AにBを知らせる)やdeprive A of B(AからBを奪う)などは「授与(正の授与もあれば、負の授与もある)」「着脱」の動詞として、線的イメージで捉えた方がいいかもしれません(SVOO)。

 つまり、SVOOというパターンを取るのは、その動詞の示す「動作」自体が「起点」(動作目的、直接目的語、~を)と「終点」(動作対象、間接目的語、~に)の2つを要請するからであり、こうした基本構造をふまえた上で、「直接目的語」しか受動態で主語にできないケースと「直接目的語」も「間接目的語」もどちらも受動態で主語にできるケース、あるいは前置詞でto, for, withを取る違いや、「二重目的語構文」(I gave him a book.)と「前置詞与格構文」(I gave a book to him.)のニュアンスの差などを「下位分類」として(「基本構造」の違いとして「文型」化するのではなく)、説明していく必要があるでしょう。


第5章 「構造―機能分析」について(試論)

 それでは「動詞の分類」を中心に、文の基本構造に関して「理念型」として包括的に分類してみましょう。ほとんどの「文」が構造分類上、次のどれかのパターンに入ります(「構造―機能分析」)。

(1)語法による分類

(2)意味内容による分類

(3)統語的機能による分類|動詞句の次に要請する語句の種類

(4)統語的機能による分類|目的語の次に要請する語句の種類

(5)単文における述部類型

(6)5文型理論による分類S=主語V=述語動詞O=目的語C=補語

(7)7文型理論による分類A=付加語

be動詞

存在動詞連結動詞

φ(空集合)

 

パターン1

SV

SV

名詞句

 

パターン2

SVC

SVC

形容詞句

 

パターン3

SVC

SVC

副詞句

 

パターン4

SV

SVA

動詞句

 

パターン5

SV, SVC, SVO, SVOO, SVOC

SV, SVC, SVA, SVO, SVOO, SVOC, SVOA

一般動詞

状態動詞

φ

 

パターン6

SV

SV

名詞句

φ

パターン7

SVO

SVO

名詞句

パターン8

(SVOO, SVOC)

(SVOO, SVOC)

形容詞句

パターン9

SVOC

SVOC

副詞句

パターン10

SVOC

SVOC

動詞句

パターン11

SVOC

SVOC

形容詞句

 

パターン12

SVC

SVC

副詞句

 

パターン13

SV

SVA

動詞句

 

パターン14

SVO

SVO

動作動詞

φ

 

パターン15

SV

SV

名詞句

φ

パターン16

SVO, SVC

SVO, SVC

名詞句

パターン17

SVOO, SVOC

SVOO, SVOC

形容詞句

パターン18

SVOC

SVOC

副詞句

パターン19

SVO

SVOA

動詞句

パターン20

SVOC

SVOC

形容詞句

 

パターン21

SVC

SVC

副詞句

 

パターン22

SV

SVA

動詞句

 

パターン23

SVO

SVO


(1)語法における分類
 be動詞と一般動詞の語法に大きな違いがあることは、疑問文の作り方などに確認することができます。
【be動詞】「be動詞+主語」の語順になります。
【一般動詞】文頭にdo(does, did)を置き、「do+主語+動詞の原形」の語順となります。


(2)意味内容における分類
【be動詞】元々「存在」を表わす代表的な動詞ですが、やがて、単に「~である」という意味を表わす「連結動詞」として機能するようになりました。be動詞の後には主語と全く「等価」なものが来る場合と、主語の性質・職業など「属性」を表わすものが来る場合とがあります。

【状態動詞】一般動詞はさらに「状態動詞」(stative verb)と「動作(動態)動詞」(dynamic verb、あるいは「非状態動詞non-stative verb」)に分類されます。この2つは意味的にも統語的にも異なっており、「状態動詞」は主語の「状態」に力点を置き、「動作動詞」は主語の「非状態性」「動き」に重点を置いていると考えられます(もちろん、haveのように両方の意味を持つ動詞もあります)。また、「状態動詞」と「動作動詞」の大きな違いとして、「状態動詞」は「状態」を表わしているので通例「進行形」にすることができないこと(「一時的状態」なら可能です)、「意志」ではどうすることもできないから命令文を作ることができないことなどが挙げられます(もちろん、例外はあります)。ちなみに従来、「状態動詞」として一括して扱われてきたbe動詞は、We are being flooded with inquiries.(目下、問い合わせが殺到している)のように「一時的状態」を表わす場合は「進行形」にすることもできますし、Be quiet.(静かにしなさい)のように命令文を作ることもできます。

「状態動詞」には大きく分けて次の3種類があります。
(a)「一般的状態」を表わす動詞~belong to, consist of, resemble, differなど。
(b)「心理状態」を表わす動詞~like, lobe, hateなどの好悪を表わすものや、think, knowなどの思考・認識を表わすものが入ります。
(c)「知覚」に関する動詞~see, hear, look, sound, feel, taste, smellなど。

【動作動詞】「動作動詞」には大きく分けて次の3つがあります。
(e)「到達動詞」(achievement verb)~「完了的な瞬間動詞」で、reach, arrive, leaveなどの「往来発着」系やslip, drop, die, winなどの「瞬間的事象」を表わすものなどがあります。
(f)「達成動詞」(accomplishment verb)~「完了的な継続動詞」で、make, build, read, assembleなど、時間がかかるが「完了」を意味します。
(g)「活動動詞」(activity verb)~「未完了的)な継続動詞」(動作が妨げられない限り、いつまでも続けられ、終わりが無いイメージがある)で、drive, run, push, smokeなどがあり、時間の長さもあり、完了の意味はありません。

ところで、従来、「目的語」を必要としない「自動詞」(「補語」を必要としない「完全自動詞」と必要とする「不完全自動詞」)と、「目的語」を必要とする「他動詞」(目的語を1つ取る「完全他動詞」、2つ取る「授与動詞」、「目的語」以外に「補語」を必要とする「不完全他動詞」)という分類がなされてきましたが、実際にはほとんどの動詞に「自動詞」の意味・用法と「他動詞」の意味・用法があり、これは「動詞の分類」ではなく、「動詞の用法の分類」とされます。もちろん、動詞によって、「自動(詞)用法」が主のものと、「他動(詞)用法」が主のものと、両方とも頻繁に使用されるものがあるわけです。あるいは、全ての「動詞」には「他動詞性」「他動性」があり、「動作対象」(目的語)が主語自体である場合が「自動詞」(これをさらに明確化・強調する場合、再帰代名詞を目的語として取ります)で、他に向かう場合が「他動詞」となると見る場合もあります(英語でも「自動詞intransitive verb」は「他動詞transitive verbではない動詞」と表現されます)。


(3)統語的機能による分類(動詞句の次に要請する語句の種類)  英語の単文における基本構造は「主語+述語動詞」であり、具体的には「名詞句+動詞句」という語順になっています。この後に何が来るかで「文型」を分けてきたわけですが、厳密に言えば、これば「文型」(sentence pattern)というより、「動詞による述部類型」ということになるでしょう(しかも、あくまで「単文」のケースです)。「5文型理論」の原点たるオニオンズも元々「文」(sentence)の「型」ではなく、「述部」(predicate)の「型」として、V, VO, VC, VOO, VOCの5つを挙げたのでした(Advanced English Syntax ,1904年)。日本にこのオニオンズ理論を導入した細江逸記も、「文型分類」は文全体の構造というよりも、むしろ「述部の構造」を分類するものとして提案しており、動詞が5種類であるから、結果として文型も5種類であるという考え方を示しています(『英文法汎論』1917年)。

 ここで文を構成する「内容語」と「機能語」という「品詞」概念に立ち返ってみると、文の内容を決定する要素を持つ「内容語」には「名詞」「動詞」「形容詞」「副詞」があり、それ以外は「内容語」のつながりを示す「機能語」とに分類されるわけで、「5文型理論」は「名詞」「動詞」「形容詞」の3つだけが「文の主要素」(主語S、述語動詞V、目的語O、補語C)として考察され、それを補完しようと試みたクァークの「7文型理論」では、「副詞」の中には「文の主要素」たり得ない「修飾語M」以外に文の構成上不可欠な「付加語A」があると見て、「内容語」の4つ全てを「文型理論」に組み入れたことに特徴があると言えます。さらに1単語たる「品詞」ではなく、実際の機能面から「句」に着目すると、「名詞句」「形容詞句」「副詞句」「動詞句(具体的には不定詞・分詞といった準動詞の形となります。一方、同じ準動詞たる動名詞は名詞句化していると言ってもいいでしょう)」の4つが考えられ、これに「φ(空集合)」を加えると、「名詞句(S)+動詞句(V)」という基本構造の後に要請される語句として「φ」「名詞句」「形容詞句」「副詞句」「動詞句」の5つのパターンが理論的に想定されることが分かります。もちろん、これは「理論値」「理論形式」であり、実際に「実際値」「現実形式」として慣習的に定着したものは一部であって、全てのパターンは同列ではありません。逆に言えば、「内容語句」の観点からして、理論的にこれ以上のパターンはあり得ないと見ることもできるでしょう。


(4)統語的機能による分類(目的語の次に要請する語句の種類)
 英語は日本語に比べて、「他動詞の力」(目的語に対する影響力)が強く、それがさらに次なるパターンを生み出します。すなわち、「名詞句(S)+動詞句(V)+名詞句(O)」の後に目的語に関連した語句を要請するという現象が起きてきます(「5文型理論」ではここに着目して、「第4文型SVOO」「第5文型SVOC」を創出しましたが、「第1文型SV」「第2文型SVC」「第3文型SVO」と明らかに異質なこの2パターンに対して、同列に扱っていいものかどうか十分な説明を与えることができませんでした)。ここから「名詞句(S)+動詞句(V)+名詞句(O)」の後に要請される語句として、「φ」「名詞句」「形容詞句」「副詞句」「動詞句」の5つのパターンが理論的に想定されます。したがって、be動詞の5パターン(be動詞には「他動性」が無いため、基本5パターンのみとなります)、状態動詞の9パターン、動作動詞の9パターンの合計23パターンが文法的理論的に要請される「理論値」で、あとはこれが文例的に「現実値」としてどこまで認定されるかを見ていけばいいわけです。


(5)単文における述部類型
パターン1 名詞句+be動詞句
現在ではGod is.のような特別な文でしか用いられません。詩や格調高い表現にかろうじて残っていると言うべきでしょう。

パターン2 名詞句+be動詞句+名詞句
My name is Tom Brown.やSeeing is believing.のように、いわゆる「A=B」の文がここに入ります。

パターン3 名詞句+be動詞句+形容詞句
Mary is kind.などですね。これをMary is a kind girl (woman).と言い換えられるように、パターン2・3は従来「第2文型」に分類されてきました。また、be covered with~やbe interested in~といった「受動態」から生まれたイディオムも、これに入れていいかもしれません。ただ、この場合、be coveredやbe interestedといった助動詞be+過去分詞が動詞句であるとすればパターン13の「名詞句+状態動詞句+副詞句」となり、これらが一種の「状態動詞」として機能し、その後に名詞句を取ると見ればパターン7の「名詞句+状態動詞句+名詞句」のパターンとなるでしょう。これはcoveredやinterestedが「形容詞」として意識されているか、あるいは「受動態」が強く意識されているか、「イディオム」としての意識が強いか、といった認知論的意識的問題であると言えるでしょう。

パターン4 名詞句+be動詞句+副詞句
I’ll be back.(戻って来るよ)やHe is there.といった文です。この副詞は形容詞であるという説明もありますが、I’m in the kitchen.のような「前置詞句」=「副詞句」(副詞として機能しているので、副詞句と見ることができます。ちなみに英語ネイティブは「前置詞」と「副詞」の区別がつかないとよく言われます)というケースもあるので、「副詞句」は「副詞句」として捉えた方がいいでしょう。「5文型理論」では「第1文型SV」と見なされ、余りに問題があるので、「7文型理論」では「SVA」としてパターン化されました。

パターン5 名詞句+be動詞句+動詞句
The concert is to be held this evening.(音楽会は今夜開かれることになっている)のように、be to doは「法助動詞」のように機能し、「予定」「運命」「義務・命令」「可能」「意志」などを表わします。形式ばった言い方で、名詞句・形容詞句・副詞句が続くパターンよりはるかに少ないと言えます。形式的には従来の「第2文型」に似ていますが、内容的にはうまく重ならないため、be toを「助動詞」としてとられ、be to doで「動詞句」を形成していると見ればいいでしょう。

パターン6 名詞句+状態動詞句
 I see.(分かりました)やYou don’t understand.(君は〔事情が〕分かっていないんだ)といった例を見ることができますが、あまり多くありません。後者の例もthe situationなどが省略された他動詞用法に由来するものと見ることができます。やはり、「状態動詞」は「状態語」(状態の内容を表示・説明する語)を要請するのが基本だと言えるでしょう。あるいはThe two regions differ.でもいいわけですが、実際にはThe two regions differ in religion and culture.(両地域は宗教と文化が異なっている)という方が自然でしょう。

パターン7 名詞句+状態動詞句+名詞句
I belong to the club.のようなケースです。この場合、belongとtoのリンク度は高く、toは「名詞句」の前に来る「前置詞」と言うより、「動詞」の後についてその意味を規定する「後置詞」と見た方がいいでしょう。「5文型理論」ではbelongは自動詞なので、この文も「第1文型SV」になってしまいます。「動詞句」という観点で概念拡張すれば、「第3文型SVO」と見ることができますが、ここで「状態動詞」が要請している「名詞句」は「状態語」であり、パターン16(これも「第3文型SVO」です)の「動作動詞」が要請している「名詞句」は「目的(動作対象)語」であるので、両者はやはり区別されるべきでしょう。I am aware of the danger.なども細かく分類すれば、パターン3の延長で「名詞句+be動詞句+形容詞句+副詞句」(「8文型理論」ではSVCAとなります)と捉えることもできますが、be aware ofを「イディオム」として「状態動詞句」として捉えれば、パターン7に分類することができるわけです。

パターン8 名詞句+状態動詞句+名詞句+名詞句
これは文例が確認できません。「状態動詞」は「他動性」が弱いということでしょうか。「状態動詞」を広義に取れば、leave A B(A(人)にBを残す)やkeep A B(A(人)にB(物)を取っておく)といったケースを見ることができます。

パターン9 名詞句+状態動詞句+名詞句+形容詞句
I found it comfortable.(それは快適だと分かった)といったケースです。「5文型理論」では「第5文型SVOC」に該当します。「O=C」の関係があるため、このCを「目的格(語)補語」と呼んできました。

パターン10 名詞句+状態動詞句+名詞句+副詞句
I called her at her house but found her out.(家を訪ねたが、彼女は不在だった)といった文例が挙げられます。パターン9と共に「5文型理論」では「第5文型SVOC」に該当し、「O=C」の関係があるため、このCを「目的格(語)補語」と呼んできました。

パターン11 名詞句+状態動詞句+名詞句+動詞句
I saw him enter(entering) the room.といったケースです。動詞句の所には原形不定詞、to不定詞、現在分詞、過去分詞が来たりします。ここに「SV構造」が隠れており、これを「ネクサス」(nexus)と言います。

パターン12 名詞句+状態動詞句+形容詞句
I feel happy.といったケースです。いっぱいありますね。Think big.(デカイ事を考えよう)などもそうです。

パターン13 名詞句+状態動詞句+副詞句
I lived in Tokyo at that time.やShe stayed at home.などですね。He thought hard (deeply).(彼は一心に〔深く〕考えた)などもそうです。

パターン14 名詞句+状態動詞句+動詞句
I like to watch television.などのケースです。to watchはwatchingに置き換えても同じ(特に米語)なので、パターン7のI like him.とほとんど同じと言ってもいいかもしれません。

パターン15 名詞句+動作動詞句
Everybody laughed.(皆が笑った)とか、Years passed.(年月が経った)といった例を見ることができますが、それほど多くありません。

パターン16 名詞句+動作動詞句+名詞句
「第3文型SVO」に分類されるもので、最も多いパターンと言えるでしょう。look atやlook up toといった「自動詞句」も「他動用法」で機能していると見ていいので、She looked at himもShe looked up to him.もこのパターンで捉えていいでしょう。

パターン17 名詞句+動作動詞句+名詞句+名詞句
いわゆる「授与動詞」による「第4文型SVOO」と分類されてきたものです。He gave her a book.などがそれで、最初の名詞句を「間接目的語」、次の名詞句を「直接目的語」と呼んできました。いわゆる広い意味での「授与行為」は、「~に」「~を」という2つの目的語を要請する「動作」であることが分かります。これをHe gave a book to her.と「第3文型」に書き換えると、若干ニュアンスが変わります。いずれの目的語を主語にしても「受動態」が成立するケースがあることから、「他動性」の影響力の強さが伺えます(全ての「他動用法」において「受動態」が成立するわけではありません)。他にもcall A B(AをBと呼ぶ)やname A B(AをBと名付ける)もこの形式に入りますが、これらは「~を」「~と」という2つの目的語を要請する「動作」であると見ることができるものの、Bを主語にした「受動態」は成立しません。「5文型理論」では「第5文型SVOC」に該当し、「O=C」の関係があります。

パターン18 名詞句+動作動詞句+名詞句+形容詞句
No wise bird makes its own nest dirty.(賢い鳥は自分の巣を汚さない)などが挙げられます。「5文型理論」では「第5文型SVOC」です。

パターン19 名詞句+動作動詞句+名詞句+副詞句
He always leaves everything in order.(彼はいつも何もかもきちんとしておく)といったケースです。「5文型理論」では「第3文型SVO」になりますが、この「副詞句」は「修飾語句」ではなく、「不可欠要素」なので、「7文型理論」では「SVOA」と位置付けられます。

パターン20 名詞句+動作動詞句+名詞句+動詞句
I want him to be honest.(彼に正直になってほしい)とか、The black suit made Susan look thin.(黒いスーツがスーザンを細く見せた)やNo one can get the car to start.(誰もその車を発進させられない)といった、いわゆる「使役動詞」のケースが挙げられます。「5文型理論」では「第5文型SVOC」に分類され、名詞句と動詞句の間に「SV構造」(ネクサス)が隠れているケースとなります。

パターン21 名詞句+動作動詞句+形容詞句
He fell asleep.(彼は寝入ってしまった)といったケースです。

パターン22 名詞句+動作動詞句+副詞句
He acted strangely.のように「副詞句」が無いと動詞の意味内容が完結しないというケースです。「5文型理論」では「第1文型SV」となりますが、これでは不備なので、「7文型理論」では「SVA」と分類されました。

パターン23 名詞句+動作動詞句+動詞句
 I want to have some apple pie.(私はアップルパイが食べたい)といったケースで、to不定詞の名詞的用法と見て、「第3文型SVO」に分類されてきました。


【参考文献】

①『秘術としての英文法』(渡部昇一、講談社学術文庫)
②『「英文法」を考える―「文法」と「コミュニケーション」の間』(池上嘉彦、ちくま学芸文庫)
③『英文法汎論 改訂新版』(細江逸記、篠崎書林)
④『ロイヤル英文法』(綿貫陽・宮川幸久・須貝猛敏・高松尚弘、旺文社)
⑤『英語教師のための英文法』(吉田正治、研究社)
⑥『英語のしくみがわかる基本動詞24』(小西友七、研友社出版)
⑦『英語構文マスター教本』(石井隆之、ベレ出版)
⑧『しなやかな英文法 実践的日・米の教科書比較』(田村泰、三友社出版)
⑨『バーナード先生のネイティブ発想・英熟語』(クリストファー・バーナード、プレイス河出書房新社)